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イベントレポート

 熊野古道センターにてこれまで開催してきた各種イベントの様子をご紹介します。

平成21年1月25日(日)「さようなら“湊の車”」ツアーで、熊野最後の線香車にお別れしてきました。

2009年01月25日

水車小屋内部 “湊の車”は、杉葉線香用の杉葉粉を製粉する水車(線香車)として三重県で唯一現存している直径5.5mの大水車ですが、本年3月までにこの水車小屋の遺構全体が高速道路建設のために取り壊されることになりました。そこで、この貴重な文化遺産を訪ねる最後の機会として、見学ツアーを開催しました。
 企画展「熊野杉葉線香ものがたり」(平成20年11月1日~平成21年1月12日)の付属企画として“湊の車”を訪ねるツアーを2回開催してきましたが、今回も“湊の車”を代々所有してきた鈴木家当代・鈴木祥嗣さんにご案内していただきました。最後の見学ツアーということで、総勢35名の参加者が地元の方を中心に、遠くは奈良県からも集まってくださいました。

 まず新鹿海岸をスタートし、湊川沿いを歩いて“湊の車”へ。現在、新鹿温泉がある周辺はかつての港湾で、ここから杉葉粉や材木などが船で出荷されていたそうです。

 “湊の車”水車小屋では、操業当時の管理人・山本平治さん一家が住み込みしていた住居がすでに取り壊されていましたが、“杉葉粉”を生産する工場部分を見学することができました。直径5.5mの水車の両側に伸びる水車軸が、合計24本の杵を持ち上げ、石臼に投入した杉葉粉を搗く仕組みになっています。杵は長さ3m、1本70~80kg程もありますから、すごい重量感です。参加者のうち子どもさんは、「こんな重い木が何本も水の力で動いていたのか、すごい。」と驚いていました。大人の参加者は、水の力を動力に変える水車について改めて感心し、水車を線香用の杉葉粉生産に利用していた東紀州の幻の産業に思いを馳せていました。
 
杉柴集め 柴切り









 ところで、このイラストは、“湊の車”水車小屋をモデルに描かれたものです。“湊の車”水車小屋に来ると、このイラストのような情景が瞼に浮かんできます。繁った草の下には杉柴を干すために敷かれた石畳が眠り、水路の樋を支えた石垣は今も高くそびえ、住み込みの管理人(線香守・せんこうもり)が毎日見回りをしたという1kmにわたる水路など、さまざまな遺構が残っているからです。ここは、山から運んできた杉の枝葉(杉柴)を石畳広場に集める女の人たち、それを鉈で裁断する男の人たち、杵が奏でるリズムの中、全身真っ黄色になって働く線香守・・・そんな懐かしい様子を感じとることができる場所です。
 山本平治さんのご長男・義之さんによると、粉づくりには杉の枝葉の先端部分だけを使い、余った枝は薪として利用したためお風呂は一年中沸かすことができ、近隣の人々が「お風呂に入れさせて~」と毎日のように訪ねてきたそうです。また、杉葉粉を搗いた後に篩で選り分けて、余ったカス粉は蚊遣り火(かやりび:蚊を追い払うためにいぶす火)用に近隣の人々へ分け与えていたそうです。素材も動力も自然の恵みのもとに育まれてきた杉葉粉産業では、伐採や枝打ち後に得られる杉の枝葉を余すところ無く利用することで森に付加価値を与え、水車小屋の回りに暮らす里人にも恩恵をもたらしていたのです。このような線香水車小屋が、江戸時代後期から大正時代の最盛期には30ヶ所以上あったことがわかっています。
 そんな当時の面影を今に伝えてきた“湊の車”も、本ツアー終了後、着々と解体が進められています。参加者のみなさんは口々に、「もったいない。」「なんとか保存できないものか。」とおっしゃいました。高速道路のために取り壊されるのは残念ですが、これらを移築・復元するとなると個人には負担が大きいのが事実です。まさに、「もったいない。」だからこそ、所有者である鈴木さんは、これまでこの線香水車小屋を維持してこられ、三重県で最後の線香水車小屋として残り、私たちもその文化遺産を目の当たりにすることができたのだと思い、大変感謝しております。参加者のみなさんも、一抹の寂しさを感じつつも、その佇まいをしっかりと心に焼きつけてくださったようです。

新鹿海岸にて鈴木さんのお話 “湊の車”水車小屋の見学











 今回の一連の企画・調査にあたって多くの方々にご指導・ご協力賜りました。当センターでは、このたび集まった資料を今後も活かし、かつての伝統産業の新たな可能性について探っていきたいと考えています。

企画展「熊野杉葉線香ものがたり」(終了)のページ

第1回「杉葉の道と、線香車を訪ねる」ツアーレポート

第2回「杉葉の道と、線香車を訪ねる」ツアーレポート

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